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咽頭炎、扁桃炎の起炎菌はA群β溶連菌だけ?

[2018.02.26]

風邪に抗生剤を使うべきではない。このような論調が増えています。そういう意見を書いている本をみると、のどの感染は溶連菌以外はないんだと書いてあるんですね。ですから、溶連菌の迅速検査で陰性であれば、それは細菌感染ではなく、ウイルス感染だと、はっきり言い切っています。

扁桃炎に関しても、溶連菌しかないと言っている本も多いのです。僕らも耳鼻咽喉科医なので、菌の培養検査をだします。その中で、いわゆる溶連菌感染症の原因になるA群β溶連菌がでたことはあまり経験がありません。他の菌のほうが圧倒的に多いですね。ほとんど大人のケースですが。

溶連菌の迅速検査は、A群β溶連菌のみをひろうのです。それ以外のタイプの溶連菌の場合はひっかかりません。もちろん、溶連菌以外の菌もひっかけません。

上記書籍によると、「咽頭、扁桃の細菌感染は、A群β溶連菌しかないのだ」と言っているわけです。

口の中の菌に関しては、いろいろな施設がデータをだしています。論文を探せばいくらでも見つかりますね。

実際、僕も検索してみました。急性咽頭炎、扁桃炎の細菌を分析した文献です。これをみると、A群β溶連菌は、全体の22%しか検出されていないのです。溶連菌以外にも、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌なども検出されています。A群β溶連菌の比率はおそろしいほど低いのです。他の文献でも、多くて50%ぐらいがせいぜいです。半数以上は別の菌だということになります。

咽頭炎、扁桃炎を起こすのは、A群β溶連菌ではなく、他の菌のほうが多いのです。これをA群β溶連菌のみを迅速検査をして、でなければウイルス感染だと言うのにはかなり無理があるのです。間違いだと言い切ってしまってもいいでしょう。このようなデータは本を書いている本人はおそらく知っていると思います。そのうえで、他の菌の可能性はないのだと書いているのであれば、これはかなり悪質なんですよ。確信犯ですね。信じてしまう医者や、その医者にかかる患者がどれだけ不幸な目にあうかと、心配になりますね。

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