アデノイド(増殖症)
アデノイドというのを聞いたことがあるでしょうか。上咽頭(鼻の一番奥)にある扁桃のようなリンパ組織です。扁桃腺と同じものと言っても間違いではありません。アデノウイルスといのとおそらく語源は同じですが、直接は関係ありません。このアデノイドが大きい状態を、アデノイド増殖症という病名をつけます。アデノイドそのものは誰でもあるものですが、子供の時には大きく、大きいことがさまざまな問題を起こします。
アデノイド増殖症について
年齢:2~5歳前後が大きい
幼児ぐらいの年齢が最大で、成長するとともに徐々に小さくなっていきます。大人では大きい人はほとんど見たことがないので、成人のころにはほとんど腫れがわからなくなります。
小さいときに一番問題なのは、鼻閉です。アデノイドが鼻を後ろから閉鎖してしまいます。このため、ずっと鼻閉が続きます。鼻詰まりがよくならないと受診する幼児は、アデノイドが原因のことが多いのです。鼻がつまっているので、「鼻水を吸ってくれ」と言われることがありますが、これは鼻汁ではないので、吸ってよくなるものではありません。薬をのんでよくなるものでもありません。判断するには、当院では鼻内をファイバーで見ています。その日のうちにすぐに判定できます。大病院ではレントゲンでみているところが多いかもしれません。このため、アデノイドが大きいかを知りたいからレントゲンをとってくれという要望もあります。レントゲンは被ばくの問題もありますし、影をみているだけなので、直接ファイバーで鼻内を見たほうがいいのです。鼻内をファイバーで見ることには、別のメリットもあります。鼻粘膜がどれぐらいはれているか、鼻汁がでているかも確認できるからです。
アデノイドが大きいと別の問題も起こります。いびきです。「子どもなのにオヤジのようないびきをかく」と言って子供を連れてくるお母さんが多いのですが、鼻がつまれば、いびきは必須です。幼児はアデノイドが大きいこともあって、いびきによる鼻閉が多いのです。子供こそいびきをかくものなのです。そしていびきがひどくなると、夜間の呼吸停止が起こります。これが睡眠時無呼吸症候群です。この病気は子供の成長にかかわると言われています。寝る子は育つという言葉があるように、睡眠時無呼吸症候群でよく眠れない子供は、よく育たないという理由になりえるのです。このため、夜間の呼吸モニターをつけた検査で確認します。自宅でやる方法と、病院に紹介して一泊入院でやる方法があります。当院での検査も子供によっては可能ですから、一度ご相談ください。
また、アデノイドの脇に耳管というのがあります。これは耳の中につながって、耳の中の空気の調整をするところです。アデノイドが大きいと耳管を圧迫し、耳の中に空気が入りづらくなります。こうなると滲出性中耳炎になります。鼓膜の中に水がたまってしまう病気です。滲出性中耳炎がいつまでたっても治らないと言う場合には、アデノイドを切り取る手術をします。この手術は全身麻酔が必要ですから、必要な場合は病院に紹介します。数日から1週間ぐらいの入院が必要になります。
アデノイドを切り取る手術をすると、夜間のいびきはまずよくなります。滲出性中耳炎にも、睡眠時無呼吸症候群にもとてもよくききます。大きいことはけっこうな障害になっているのです。ただ、成長すると小さくなり、治ります。手術を子供の時期にしたほうがいいかどうかは、手術の危険も考慮して相談が必要です。