抗菌薬適正使用とは何か
本日は、東京保険医協会、東京歯科保険医協会、千葉保険医協会主催の講習会に参加してきました。「医科歯科連携研究会2017」です。
お目当ては、神戸大感染治療学教授の岩田健太郎先生「抗菌薬適正使用とは何か」という講演でした。
国が医療機関での抗生剤を減らすために、「抗菌薬適正使用」ということを言い始めています。そのからみの講演です。抗生剤を一切使うなという論調なのかと思ったら、まったく違っていて、目から鱗の話でした。岩田教授は論客としてはすごいと普段から尊敬していましたが、本当に説得力のある話でした。しかも、1時間の話をパワポなどを使わずに、話だけで流れるように説明していくその講演スタイルに驚かされもしました。
講演のいくつかのポイントを挙げます(自分が印象に残ったところですが)。
- 抗菌薬を使うことのメリット、デメリットを考えて、デメリットが多ければ使うべきではないし、メリットが大きければ(適切な)抗生剤を使いなさい。
- EBM(根拠に基づく医療)とは、まず目の前の患者を治すために、もっとも根拠があると思われる治療をするべきである。
文章化するとけっこうわかりづらいですね。抗生剤を何がなんでも使うなということではなくて、抗生剤を使うことで起こる副作用などのデメリットと、抗生剤を用いることで得られる患者の利益を考えて、使用をかんがえるべきだということです。そして後者は、今目の前の患者を治すには、どのような治療がベストであるかの選択は、過去のデータに基づいて選択するべきだという主張です。
今、日本ではフロモックス、メイアクトなどの第三世代のセフェム系抗生剤内服薬が大量に使われています。ほとんど吸収されないので、血中濃度もあがらず、まったく効果が期待できない。使う意味はまったくないと断言していました。僕自身も、フロモックス使用はほとんどゼロ、メイアクトはクラバモックス(ペニシリン系)が効かないときにときどき使うかなというぐらいです。ここ10年ぐらいで本当に使わなくなったのが、セフェム系抗生剤の内服薬ですね。その分異様に使うようになったのは、ペニシリン系の抗生剤です。
話をまとめると、抗生剤の適正使用と言うのが、「抗生剤を使うな」ということではなく、抗生剤を使うのは本当に必要な場面にのみ限局し、有効な抗生剤を選択しろということですね。意外と抗生剤がなくても、治るケースは多いと言っていました。