風邪に抗生剤
風邪に抗生剤はいらない。
簡単に言うが、実際には抗生剤をいらない風邪なのか、抗生剤の必要な細菌感染なのかの区別は容易ではない。
のどが痛いと受診した大人がいた。口をあけてのどを見たが、異常は見つけられなかった。最初は、「風邪だろう」と思っていた。鼻汁などの風邪の他の症状がないので少しひっかかるところがあり、もう一度よく聞いてみた。「痛くて食事がとれない」と言っていた。急性喉頭蓋炎かもしれないと、喉頭ファイバーで確認するが、喉頭蓋などは正常である。この段階で痛みの原因がよくわからなかった。扁桃もまったくはれてはいないが、扁桃のあたりを痛がっている。「何かおかしい。」採血検査をすることにした。すると、白血球数が15000と通常の倍ぐらい増加していた。好中球が増えていて、ひどい細菌感染である。扁桃そのものは腫れてはいないが、扁桃周囲膿瘍の可能性がありそうだ。すぐに抗生剤を点滴することにした。
一歩間違えば、風邪だと診断して帰していたところである。「痛くて食事を飲み込むことができない。」風邪と明らかに違う症状があり、これが「何かあるはずだ。」と思わせ、最終的には採血までした。
目の前の患者が風邪なのか、風邪でないのか。この見極めはかなり難しい。少しでも納得できないときは、スッキリするまでつきつめることも大切である。
そう簡単に、「風邪に抗生剤はいらない」と結論もだせないのだ。