のどの違和感
のどの違和感というのがあります。のどがつまっているなどの症状が典型的です。何らかの細菌感染が起こっているのだろうとか、精神的なものではないかと考えるのが普通の耳鼻科医です。僕自身も数年前まではそう考えることが多かったように思います。細菌感染であれば抗生物質をだしてみる。よくならなければ、精神的な症状を考え、精神安定剤を出してみる。
最近はすっかり考え方がかわりました。
けっこう多いのは、胃食道逆流症(逆流性食道炎)ではないかと思っています。この疾患は、人口の20%ぐらいいると言われており、特に年をとればとるほど頻度は高くなります。僕自身も食道裂孔から来る逆流性食道炎をもっています。非常に多い病気であると、認識しなければなりません。上咽頭と言って、鼻の奥のあたりの炎症の原因にもなります。のどが痛むなどの症状でくることもあるのです。ただ、この病気がのどの違和感の原因になると言っても、そんなに疑問に思う耳鼻科医はいないと思います。
意外なのは喘息です。特に咳喘息がのどの違和感できます。咳喘息の症状として、咳、痰、のどの違和感と説明しています。咳がメインでくる咳喘息は診断がそんなに難しくはないのですが、ときおりのどの違和感がメインで、咳がとても軽いあるいは咳がない人がいます。これはとても診断がつきづらいのです。こんなときは、呼気のNOを測定して確認しています。この数値が上昇してくると、喘息性ののどの違和感と判断しています。
それから、パニック障害の人にものどの違和感がでます。これは違和感というより、呼吸ができないという症状で、救急病院を受診することが多いようです。息ができなくなって、死ぬかのように思いはじめ、いてもたってもいられなくなるわけです。救急病院で当直しているときには、よくこのような患者が夜中に受診してきました。喉頭をみて何もなし、呼吸状態をみて、何もなし。それでも息ができないと訴えると、この病気がかなり怪しいような気がします。たびたび発作を繰り返すので、精神安定剤がよくききます。それを飲んでもらうようにすると、ピタッと症状がおさまることが多いのです。
もちろん、これ以外の病気もありますが、この3つが、見逃しやすい病気でしょう。一人ひとりじっくり観察し、何が起こっているのだろうかと個別に考えていくしかないとは思います。