伝染性紅斑(りんご病)
子どものりんご病は診断がやさしい。頬っぺたがリンゴのように真っ赤になるからだ。手足の皮疹も特徴的で、あまり診断に迷うことはない。
ところが、大人のりんご病はとても診断が難しいと言われている。皮疹がでてこない場合も多いからだ。全身の関節痛が主訴になることもあり、
しばらく前に来た若い女性。感冒様症状に、関節痛と顔面の皮疹あり、片腕の腫脹を訴える。SLEなどの膠原病を疑い、その専門の医師に紹介したが、今となっては伝染性紅斑の可能性があったのだはないかと反省している。抗体検査をすれば診断がついたかもしれない。
実際に文献をひもといてみると、SLEと診断されその治療まではじめてから、のちに伝染性紅斑の抗体があがっていることが確認され、診断が覆ったケースが何例も症例報告されている。論文になっているということはまれなケースではあるが、そのものはありうるという話でもある。伝染性紅斑の頬部疹とは明らかに違うので、想定できなかったのだが、診断候補として思いつかなかったのが、ちょっと残念である。
多くの医師は風邪だと診断するかもしれないが、風邪とは違った症状がある。典型的な風邪ではないものは、何か原因がある。その何かをいつも見抜けたらいいのだが、日々の診療を積み重ねていくしかない。風邪以外の病気かもしれないと思わないかぎりは、自分の臨床能力に進歩はない。