フロモックス、メイアクトの駆逐
第三、四世代のセフェム系抗生物質内服薬は、フロモックスとメイアクトがとても使われている。これらの抗生剤は日本で一番使われているのだが、そもそも腸管からの吸収率が悪く、抗生物質の適正使用が唱えられ、一番のやり玉に挙げられている。僕自身は、フロモックスはほとんど出した覚えがなく(出すのは他のクリニックでだされていたからという理由ぐらい)、メイアクトはほとんど倍量投与である。ペニシリンの抗生剤が効かないような場合には、セカンドチョイスとして用いることがある。倍量でである。通常量では今はほとんど使わなくなってしまった。
この手の内服抗生剤はほとんど意味がないと言われており、悪の権現かのようにさえ指摘される。この影響があってか、ある大学病院などは、これらの抗生剤の使用をやめてしまったそうである。一切だせなくなったということだ。使うなと言っても、なかなかその使用頻度は減らない。だったら、いっそ病院に入れないようにしようということのようだ。入れなければ処方できはしない。これはこれでちょっと極論だと思う。
以前に、授乳中の女性に、ワイドシリン(ペニシリン系)をだしたことがある。授乳中に問題ないだろうと思っていたら、院外薬局から疑義紹介があった。ペニシリンはだめだというのだ。「では、何をだしたらいいのか?」と聞いたら、メイアクトなどのセフェム系のほうがより安全だと言う。しかたないので、ペニシリンの処方をやめて、授乳中の女性にはメイアクトをだしていた。そもそもペニシリンは、赤ちゃんにも飲ませて安全な薬なのに、なぜセフェムなのか、ずっと気にかかっていた。ペニシリンとセフェムの違いは何なのか?最近、その理由がようやくわかった。
メイアクトというのは、体にほとんど吸収されない。そのために、母乳への移行が極めて少ない。腸管から血液中にはいって、そこから母乳に移行するのだ。吸収されないなのだから、母乳にもでない。これだけの理由である。一方、ペニシリンの体内吸収率はかなり高く、母乳への移行も多い。だからセフェムの方が安全ということのようなのだ。
これは何か間違っている。薬局の方は、母乳への移行だけを問題視して、疑義紹介をしてくる。その抗生剤がきくかどうかは関係なく、母乳中にでるかどうかをつっこんでくるわけだ。抗生剤が体に吸収されないから、母乳をあげても安全ということになっているのだ。だったら、そんな抗生剤出す意味ないじゃないか。益にも害にもならない薬ということだ。
抗生物質をなぜ使うのか。それを考慮せずに、安全面だけから考えるのは見当違いであろう。これに気づいてから、セフェムを第一選択で使うことはほぼ100%なくなった。