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ひどい咳

[2018.10.05]

アレルギー性鼻炎で受診した患者が、咳がするという。けっこうひどい咳をしている。咳の音を聞くと、喘息性の咳かどうかはけっこうわかる。もちろん、すべての咳がわかるというわけではないが、この人は明らかに喘息性の咳である。

当院では咳の診断に呼気のNOを積極的に測定している。これが上がっていれば、自信をもって喘息ですと判断できるからだ。この患者さんにも呼気NOを行おうとした。喘息の可能性があるので、検査をしますと言ったら、「私は今まで喘息と言われたことがない」と怒り口調で言ってきた。このため、検査をとりやめて、咳に関してはこちらでは治療をしていかないということで同意してもらった。納得しない患者に、喘息の治療をすすめても、そもそもきちんと治療しない。納得してもらうために、呼気NOを測定しているのだが、その検査をすることすら納得しないというのではしかたない。

喘息性の咳は、気圧低下にかなり影響を受ける。ここ1週間喘息患者が急増しているのは、明らかに台風による気圧低下の影響である。今日の状態でもけっこう咳をしていたので、明日、明後日とおそらく咳がひどく、つらくなってくることだろう。本人が希望しないのであればしかたない。咳がひどくなれば、どこか他の医療機関を受診するに違いない。

実は咳の音を聞いただけで、けっこう喘息性のものかどうかは自分にはわかる。かなり当たっていると思う。ただ、呼気NOの結果も考慮し、喘息の診断をするようにしている。咳をたびたび繰り返していても、どんなにひどい咳が起こっていても、内科の医師により、「喘息ではない」と言われてしまうことが多いので、喘息の根拠となる呼気NOを測定して証拠を残しているのだ。その数値が高いことが、自分が喘息だという根拠の自信になっているからだ。耳鼻科医の言ったことと、内科医の言ったこととどっちを患者が信じるだろうか。喘息だという耳鼻科医の言うことなんて、患者は信じてくれまい。

こんな理由で、咳の初期に喘息だと診断するのは勇気がいる。ステロイドの吸入薬をだしてしまうと、咳がすぐにおさまってしまうことが多いだけに、よけいにたちが悪い。喘息ならこんなに早く咳がおさまるはずはないと患者にさらに不信感をいだかせるからだ。

やりやすいのは、咳がずっと続いていて、内科医などの転々としてまったく治らないし、咳はつらいしという患者である。このような患者は、ステロイド吸入で一発で咳をおさえると、本当に信頼してくれる。今までとまらなかった咳がウソのようによくなるからだ。

しかし、たまたま風邪をひいたと当院にきて、咳があまりひどくならないうちに、喘息だと診断した場合にはまず信じてもらえない。このような場合に、あえて治療をしないという選択をすることがある。悪くなって、さんざん咳が続いてから、治療を開始するのだ。患者さんには不親切な行為だと思うのだが、咳が軽いうちに診断、治療をしても、結局患者が信じないので、病気がよくならないことがたびたびある。あえて一度泳がせておくと、今後の加療がとてもうまくいく。

今週末日曜日ごろをピークに喘息は悪化してくる。咳がひどくなるようなら、喘息を考えたほうがいいでしょう。

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