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病巣扁桃

[2017.10.13]

扁桃の炎症がさまざまな全身症状を引き起こす。扁桃が病気の中心になるのだ。このような扁桃のことを病巣扁桃と言う。扁桃の炎症が引き起こす病気として有名なものは、IgA腎症と掌蹠膿疱症のふたつがある。

IgA腎症とは、慢性腎不全になる代表的病気であり、通常はステロイドで治療をしていく。扁桃の炎症が腎臓を悪くする引き金になるらしいという説のもとに扁桃摘出術が行われている。扁桃をとりプレドニンでの治療とあわせると、治癒率があがるらしい。耳鼻咽喉科では腎臓内科の医師からの依頼により、扁桃をとるだけなので、どれぐらい効果がある治療かはよくわからない。

また、掌蹠膿疱症という病気も、扁桃との関係がよく言われる。扁桃の炎症が、この病気の悪化要因になるようだ。このため、扁桃をとると、きわめてよくなる人がいる。もっとも、まったく変化がない人もいるので、確実な治療法というわけでもない。

先日、関節リウマチで治療中の患者が来た。ときどき肩が痛くなると、食べ物が食べられないぐらいのどが痛くなるようだ。リウマチの医師に聞いても原因がわからないから、耳鼻科に行ってみてもらうように言われたらしい。当院に受診したのはまったく別の目的であり、その時どのようになっていたかは、今となってはよくわからない。しかし、これも扁桃が原因になっていた可能性が高そうだ。

文献を調べてみると、「扁桃炎に伴う反応性関節炎」と呼ばれるものがあるらしいことがわかった。関節が痛くなるとのどが痛くなるのではなく、むしろその逆ののどが痛くなる(扁桃炎)と、その炎症反応により関節炎で肩が痛くなるのであろう。関節リウマチと思われている患者の中に、扁桃炎による関節炎がまぎれているのではないか。内服でのリウマチ治療よりも、扁桃摘出術が効果があると、この論文には要約されていた。

この患者が本当のリウマチなのかどうかは自分には知るすべもないが、扁桃炎がリウマチ様の関節炎を引き起こすということは、リウマチ専門医であれば知っていなければならないことであろう。

扁桃の炎症は、さまざまな病気の源になる。そのことは抑えておいてもらいたい。

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