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エコー

[2018.02.20]

耳鼻咽喉科でエコー(超音波検査)を用いているところは少なく、あまり利用されていないのが実情です。

エコーの一番すぐれているのは、甲状腺の病気の確認です。甲状腺腫瘍は一発で有無がわかります。他にも甲状腺炎などの診断にも使えます。次に役立つのは、顎下腺、耳下腺などの唾液腺の腫瘍、炎症の診断です。特に反復性耳下腺炎とムンプス(おたふくかぜ)の鑑別にかなり役立ちます。最後に、リンパ節。首のはれがリンパ節の腫脹によるものかどうかが、ほぼわかります。触っただけではよくわからない場合には一発で区別ができるのです。

ここまでは、当院で今までもやっていたのですが、エコーの医学書を見てみると、さらなる利用法が書いてありました。

まずは、副鼻腔炎。こどもの副鼻腔炎を診断するには、副鼻腔のレントゲンをとるのと、同程度の診断率といわれているので、開業初期にはけっこう使っていました。放射線のリスクがないのが、こどもにはいいのです。しかし、当院でレントゲンをいれてからは、めっきりエコーを鼻に使うことはなくなりました。レントゲンをとるか、あるいは、副鼻腔ファイバーと問診だけで診断がついてしまうので、エコーもレントゲンもあまりとる意味がないと思っています。

他に、扁桃周囲膿瘍に使えるらしいのです。ただ、耳鼻科医は直接扁桃をみて、あやしければ針をさして膿の有無を確認することができるので、耳鼻科医には意味がないと思います。内科の先生には有効なのかもしれません。急性喉頭蓋炎の診断にも使えそうなのですが、これも耳鼻科医は直接ファイバーでみてしまいますから、意味はないかな。

また、唾石の有無にも使えるようなのです。何度かためしたことがありますが、実際に自分で唾石を指摘できたことはありません。エコーではけっこう難しそうです。

鼻骨骨折にエコーが使えるという論文があって、自分でも試したことはあります。ところが、鼻のようなでっぱっているところにエコーをあてるのが難しいのと、傷の上からゼリーを塗るのはどうなんだろうか。そんな問題があり、論文のようにはうまくいきそうにありません。論文なんて、うまくいったものだけを症例報告しているわけですからね。

実は一番見たいのは、頸動脈の動脈硬化なのです。動脈の変化がエコーは直接確認でき、内科の医師はけっこう使っています。頸部の動脈硬化が耳鳴、めまい、難聴などの原因になっているものがけっこうあると思っているので、ここらへんとの関係を証明できたら、画期的なことなのです。まだ、なんの手掛かりも得られてはいませんけどね。

あと、小児科領域では腹痛の原因精査に使えます。虫垂炎、腸重積など腹部の疾患の診断にかなりつかわれるようになってきています。ただ、若い小児科医はエコーをかなりつかうようになってきたのですが、中年以降の小児科医はあまり使用経験がないようです。エコーを日常的に使っている小児科医は少ないですね。

新しい機器の導入で今まで診断ができなかったものが、簡単に診断できるようになります。これが一番のメリットですね。ただ、どういう病気の診断に使えるのか、まだまだ研究が少ないのです。内科がエコーの最先端ですが、最近は小児科がかなりつかうようになってきています。耳鼻咽喉科は物好きしか使わないですね。しかし、一部の疾患にはとても有効なので、今後広がってくることでしょう。自分としては、今までわからなかったことがわかるようになる。そのために、日々の診療が面白くなってくるのです。モチベーションをあげるためには、新たな試みをしていくことが大切なのです。

一応知らない人のために言っておくと、エコーは検査の中では痛くもつらくもありません。そして放射線被爆の問題もありません。このため、とても患者にとって楽な検査なのです。ただ、使用経験がないと、なかなか難しいんですね。

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