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僕がマクロライド抗生剤を使わない理由

[2018.10.05]

マクロライド系抗生物質は小児科、内科、そして耳鼻科でも盛んに使われている。クラリスがもっとも使用されていることが多いような気がする。今日はこのようなマクロライド系抗生物質の問題点を書いてみる。

僕が急性中耳炎や急性副鼻腔炎など、風邪からの細菌感染にマクロライド(と省略します)を使わなくなって、20年以上になるかもしれない。使わなくなった一番の理由は、抗生物質の耐性率。ようするに、この薬が効かないってこと。クラリスに関しては、鼻や耳の感染症の中心の菌である、肺炎球菌への効果が極めて弱い。かなり前から、肺炎球菌の80%はクラリスが効かないというようなデータがでてきている。8割効かない抗生剤をなんで使おうとするのか。自分には全く理解できない。

内科でも、小児科でも、そして他の耳鼻科でも、マクロライドが全盛だ。風邪に抗生剤はよくないのはもちろんではるが、風邪からくる副鼻腔炎、中耳炎などには抗生剤を使うのも悪くない。こんな観点から、風邪をひいたときによくマクロライドがだされている。中耳炎などで当院を訪れる患者がお薬手帳を持ってくる。なんの薬がだされているかというと、その多くがマクロライドだ。全然治らないと受診してくるのだが、大半はマクロライドがだされている。そんなとき、ちょっと苦しい説明をせざるをえなくなる。効かないとまではいいきれないのだけど、「8割ぐらいはこの薬に耐性菌で、実際に治っていないわけだし、、、でも、2割ぐらいは効くようだから、出すのはダメだとまでは言い切れないけど、、、」

マクロライドについて弁解させてもらう。慢性副鼻腔炎のマクロライド少量長期療法というのがある。マクロライドを半量にして2~3か月続けていく治療である。僕自身も、マクロライドのこの治療としてはよく利用している。しかし、勘違いされやすいのは、この治療の際のマクロライドは、菌を殺す作用を期待してはいないということだ。抗生剤なんだけど、菌を殺す目的ではなく、免疫能を高めるなど、別の効果を期待して使われているのだ。そもそも細菌がいっぱい増えているような急性期の状態にはまったく効果は期待できない。

「副鼻腔炎=マクロライド」このような誤解が広がってしまい、急性副鼻腔炎(慢性のものではない)の細菌がすごく増えている状態にも、マクロライドが頻繁に使われている現状がある。耳鼻科医は、慢性副鼻腔炎のマクロライド少量長期療法の観点から、長い間マクロライドを使用し続ける。このような影響からか、世の中の鼻の中の細菌(特に肺炎球菌)は、マクロライド耐性率が一気に上昇してしまったのであろう。これも耳鼻科医にも責任があるとは思っている。

しかし、マクロライドの抗生剤の安全性(副作用が少ない)から小児科医師もしきりに使う。内科の医師も、咳がひどいと聞くと、すぐにマクロライドをだす医師が多いようだ(これにも理由があるが、ちょっと省く)。マクロライドの使いまくりが、マクロライドの耐性率を急激におしやっているのだ。ただ、そんなことをブツブツ言っても、世の中が変わるわけではなく、現実的ではない。現実な対処方法として、「マクロライドを使わない」というのが、自分の考えである。

ただし、例外がある。次なようなときには、マクロライドを使う。

  • 慢性副鼻腔炎のマクロライド少量長期療法
  • 滲出性中耳炎にもマクロライド少量長期療法
  • 百日咳
  • マイコプラズマ肺炎

上、二つは半量で。下ふたつは、血液検査などをして、確定したときのみ。

マクロライドに関しては使用を制限すると、耐性率はすぐに改善するという報告もあるようだ。ただ、うちで使わなくても、よそで使っているのなら、同じことではある。

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