インフル迅速検査の陽性率はせいぜい70%ぐらい
インフルエンザ迅速検査で、インフルエンザがわかると思っている人が多い。
インフルエンザの検査で陽性にでればまずインフルエンザであることは疑いない。ところが、陰性になったからと言って、インフルエンザではないとは言えないのだ。なぜならば、迅速検査の養成率はせいぜい70%ぐらいだから。ようするに、10人検査をしても、3人ぐらいは陰性になってしまうということ。迅速検査のキットの販売会社は、85%ぐらい陽性にでると言ってはいるが、この数字は高すぎる気がする。条件にもよるが、自分の実感ではせいぜい70%ぐらいがいいところだろう。この確率をあげるには、発熱後すぐに来た患者にはやらないで、翌日に持ち越す。また、鼻の奥から思いっきりとるなどの方法があるが、それでも100%には絶対にならない。
インフルエンザを疑っても陽性にならなければ、翌日再検査という方法もある。これで陽性になる場合も多い。なぜかというと、一日待つ間にウイルスが急激に増殖してしまうからだ。その結果、高熱は続き、治りは極めて悪くなる。なぜかというと、インフルエンザの薬は増えたウイルスを殺すものではなく、増えるのを抑える薬だからである。増えてしまったウイルスはどうしようもないのだ。ウイルスが増える前、検査がまだ陽性になる前にインフルエンザの薬を使うと、すぐによくなってしまう。ウイルスがまだ増えていない段階で、薬でおさえてしまうからだ。あまりにも早くよくなりすぎるので、「インフルエンザでないに違いない。」と医者を信じない人もけっこういる。診断するのが目的であるならば、すぐに検査をやらずに、40度近い熱がでるようになってから検査をすればいい。こうなってから検査をすれば、確実に陽性になる。ただし、そうなってから薬を出しても、すでに増えてしまったウイルスは少なくならない。その結果、病気は長引く。
僕自身は、検査で陰性であっても、自分の判断でインフルエンザと診断し、薬をだす。インフルエンザ患者との接触、臨床症状から判断できるからだ。迅速検査の陽性率がせいぜい70%と言ったが、自分のインフルエンザ診断率は、80%はあると思っている。軽い症状のインフルエンザの場合は、検査キットを使わないと診断が難しいが、検査キットを使えば診断率は90%はいくと思っている。ようするに、検査キットだけで判断するよりも、自分の判断のほうが診断率は高い。
検査で陰性でも、臨床症状から初日に薬をだす。もちろん、薬を使わずに翌日再検査をして判断するほうがいいかどうかなどは、患者に確認をとっている。患者が検査をしてほしいと言えば、検査は行う。受診した患者はどう思うかわからないが、迅速検査の結果よりは自分の診断に自信をもっている。
検査で陰性になった患者に、インフルエンザの薬をだした。その患者は翌日他の医療機関を受診し再検査をしてもらったら再度陰性だった。陰性だったのだから、僕の診断ミスだと言っているそうだが、薬でウイルスを最初からおさえてしまえば、陽性になる確率はきわめて低くなる。検査で陽性になるには、ある程度以上のウイルスが増えることが必要だからだ。再検査するのであれば、薬を使ってはならない。薬を使わないで翌日に検査をもちこせば、もっとひどくなるか、もしくはよくなっているかのどっちかである。よくなったからインフルエンザでないとも言えない。自分に免疫がそなわっていれば、一時的に熱がでても、すぐによくなってしまうことも多いからだ。
インフルエンザは高熱が4日間続くと思っている人も多い。これは自分の免疫がなければの話だ。免疫が十分にあれば、感染しない。しかし、少しだけ残っている場合には一時的に熱がでてもすぐに下がってしまったり、あるいは軽い熱しかでないことになる。軽症のインフルエンザは実はたくさんいるということをここで何度も書いてきた。インフルエンザというのは、検査で陰性にしかならないケースもけっこうあるのだ。
もう一つ加えておけば、軽症のインフルエンザは仕事や学校を休む必要性もないと思っている。軽症だと言うことはウイルスをあまりだしてはいないので、マスクして他の人にちかづかなけければそんなに感染源になるわけではない。別に学校や仕事に行ってもいいとも思っている。「そんなことをしたら、他の人にたくさんうつるではないか。」と批判がくるかもしれない。しかし、検査でインフルかどうかを判断していては、検査をすり抜けるインフルエンザ患者はたくさんいるのだ。そのような患者にインフルエンザではないと思わせてしまうほうが問題が大きいい。陰性でインフルエンザでないと医者にお墨付きをもらえば、マスクもしないで、周囲の人にウイルスをばらまきたおしてしまうだろう。うつされたら困るというのであれば、少しでも具合が悪い人はすべて休ませるような措置が必要になる。そう、新型インフルエンザ騒動のときはそのように対応していた。そこまでしなければ感染が広がるのを防げない。いくら検査キットが普及しても毎年インフルエンザの流行が防げないのは、そもそも検査に頼る姿勢に大きな問題があるのだと思う。