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急性副鼻腔炎に対しての誤解(2)

[2018.05.09]

引き続き、急性副鼻腔炎のガイドラインから。←実際に読んでみてください。

「マクロライド系抗生剤は副鼻腔炎の細菌には効果がない」〇

急性副鼻腔炎の起炎菌は、肺炎球菌、インフルエンザ菌の二つが二大起炎菌である。ガイドラインにはそれぞれの菌ごとに薬の耐性率がのっている。その結果、副鼻腔炎にはマクロライド系の抗生剤(クラリス、クラリシッドなど)は効果がなく、治療薬からもはずされている。これらの抗生剤に対しては、耐性菌の確率が極めて高いのだ。僕自身、それは予想していたので、急性副鼻腔炎でひどくなった人にはこれらの抗生剤を使わない。今はもっぱら、ペニシリンである。ガイドラインでも、抗生剤を使うのであればペニシリン系というのが真っ先に書いてある。

ところが、他のクリニックの処方をみると、マクロライドを処方されているケースが圧倒的に多い。もちろん、絶対に効かないとは言えないので、出すのが間違っているとは言えないが、効く確率が少ないから、効く確率の高い抗生剤をだしたほうがいいと思う。ガイドラインにははっきりと推奨治療についても書いてある。

副鼻腔炎と言えば、マクロライド。このように言われて久しい。多くの医者はこの言葉を信じている。それというのも、「副鼻腔炎に対するマクロライド少量長期療法」というのが有名になってしまったからだ。この治療ではたしかに副鼻腔炎を治療するが、そもそも急性副鼻腔炎の治療というよりも、慢性副鼻腔炎に対する治療である。このマクロライドも、細菌を殺す効果はないが、免疫系に働き、慢性の副鼻腔炎には効くと評価されているのだ。僕自身も、慢性期にはこのようにマクロライドを使っていく。しかし、急性期の細菌がバリバリに増殖してきたときには全く効かないのだ。このため、抗生剤を使いわけている。なんでもマクロライドというわけではなく、使いわけが大切なのだ。

ここでいきなり子供の話にもどるが、小児科領域でもマクロライドをだす小児科医も多い。小児科でもこの薬は多用されているため、同様の耐性菌だらけである。このため、小児の鼻や耳の菌にはほとんど効かない。風邪のときに小児科から抗生剤を飲んでいたのに、急性中耳炎になりましたということは本当によくある。たいていはマクロライド系の抗生剤である。マクロライドは副作用が少ないので安心してだせるのだが、味がまずいのが多いということと、そもそも効かないような抗生剤はだす必要がない。そのことは真摯に考える必要があろう。

けっこう専門的な話で、医師などの専門家でないと理解はできない話かもしれない。ここで書いたのは僕の意見である。反論したい人も多いかもしれない。反論する前に、自分で調べてほしい。このような考えもあるということを踏まえて、自分の治療をじっくり検討してほしい。多くは惰性で薬をだし、たぶん効くだろうと思い込んでいるのだ。自分の治療が正しいと信じることも必要なのだが、あらためて自分の治療が本当に正しいのだろうかと確認する機会になればうれしく思う。

僕自身も、何か疑問がでてくれば、つねに文献を調べ、自分の頭で考える。文献をうのみにするのもよくないが、思考停止はもっとよくない。自分の考えが間違っていると思ったら、すぐに改めるべきだと思う。自分自身もその繰り返しである。常に考え、常に方針を変えている。このブログを読んで、反論があるのなら、自分で確認してほしい。このブログを全面的に信じる態度も好ましくない。

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