無難聴性耳鳴
耳鳴で受診する人の9割には、なんらかの難聴がある。難聴があれば、それが耳鳴の原因だということになる。ところが、1割ぐらいの人は難聴そのものが見つからない。なぜ難聴がないのか。いくつかの理由が指摘されている。
1)耳鼻科での聴力検査で調べてはいない周波数帯に難聴がある
耳鼻科の聴力検査とは7つの周波数帯域のみを検査している。たとえば、4000Hzの次は8000Hzの検査を行う。その間に関してはしらべていないわけなのだ。まれではあるのだが、6000Hzに難聴がある人がみつかることがある。耳鼻科の普通の聴力検査をすり抜けてしまうわけだ。これらのすり抜けをなくすには、自記オージヲメトリーという検査をするのがいい。周波数が順に変わっていくのを連続して聴力検査をやる方法である。これで難聴がみつかるかもしれない。
2)まだ難聴に至るまで障害が重くなっていない
最初に耳鳴で受診し、その段階では難聴がなくても、その後経過をおっている間に難聴がでてくる場合もある。定期的な聴力の結果をおっていくことが大切だと言われるゆえんである。聴神経腫瘍の場合も早期には耳鳴だけで見つかることもある。腫瘍が大きくなれば、難聴もでてくることはまちがいない。腫瘍が小さいので難聴は起こっていないが、耳鳴りはでてきているのだ。
3)心因的なもの
耳鳴の原因は内耳にはなく、脳の音のバランスの不調によって起こる人がいる。ストレスだったり、うつ病だったり、精神的な問題により脳の変調をきたし、それが耳鳴という形で表面化していく。このようなケースには、抗うつ剤などの薬が耳鳴をおさえるのには効果があるようだ。
耳鳴で受診し、難聴が見つからないという人も珍しくはない。難聴があるかないかにかかわらず、耳鳴で悩んでいるのであれば、何らかの治療が必要であろう。