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killer disease

[2018.01.13]

killer disease という言葉がある。救急医療領域でこの言葉はよくつぶやかれる。直訳すれば人を殺す病気である。その意味は、見逃したら大変なことになるという病気である。最初から意識がなくなって運ばれてくるようなのは、見た瞬間に重症なのはわかる。このようなものではなく、一見なんともなさそうでも、実は大変な病気が隠れているときに使われる。

耳鼻咽喉科では代表例は、急性喉頭蓋炎である。この病気は、「のどが痛い」という主訴で来る。風邪だろうと思って返せば、その日の夜に呼吸困難で亡くなりかねない。また、救急病院を受診しても、耳鼻科医以外ではこの病気の診断はけっこう難しく、原因がわからないまま手遅れになることもあるのだ。

内科領域では一番怖いのは、心筋梗塞である。胸が痛いと来る。突然死は十分ありえる病気だ。また、大動脈の解離も危ない。これも胸が痛いと受診する。

脳領域では、クモ膜下出血と脳出血である。クモ膜下出血は頭痛でくる。ひどい頭痛はまずクモ膜下出血を考えなければならない。脳梗塞もあるが、脳梗塞のほうが少し危険度は少なくなる。脳の出血は非常に危ない。元気だからと自宅に帰せば突然死もありうるのだ。

これらの病気は頻度は少ないかもしれない。しかし、見逃せば大変なことになるので、常のこれらの病気の可能性はないだろうかと頭に入れておかなければならない。少しでも疑ったら、これらの病気を否定できるまでは、患者を帰すわけにはいかない。

このような病気は、開業医に来ることもありうる。重症度が強いのは直接救急病院に行ってしまうが、症状が軽いものは開業医にくる。先日も、脳出血を疑った患者が来た。もちろんこちらでは脳CTなどはとれないために、救急病院に緊急紹介した。その結果、何も異常はなかった。からぶりだったようだ。10回空振りしても、中には本物が1回ある。このためには、大丈夫ということを確認できるまでは安心できない。

 

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