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突発性難聴は緊急性を要するか?

[2017.12.18]

突発性難聴になったら、全てのものを投げ捨てて、病院です」というツイートが話題となっているそうだ。

患者さんの中にはたしかにこのように言ってくる人も多い。しかし、僕は否定的である。

大学病院にいたころに、これを検証したことがある。開業医の先生に協力してもらい、突発性難聴の診断がついたら、夜中でもなんでも大学病院でひきとってその治療をするということだ。これにより、早期に治療に入れば治癒率が上がるかどうかを検討してみた。結果は、大差なかった。

ただし、あまり遅いのは問題だとは思う。1か月以上すぎると難聴が固定してしまい、回復しないものと思われる。一刻をあらそわなくてもいいが、遅くとも2週間以内に来てほしいし、1週間以内に治療をはじめられればベストと思う。

耳鼻科医の中には、「すぐに来ないから、治らない。」と患者を責める人がいる。たしかに、遅れてきた患者は治りが悪いことが多い。

しかし、考えてみれば当たり前の話である。難聴の症状が軽い人はすぐには来ないことが多い。たいしたことがないと思うからであろう。そうしている間に治ってしまう場合もけっこうある。治ってしまえば、受診しない。しかし、いつまでも治らない人は病院にくる。重症で治りが悪いから病院に来るのだ。途中で治った人が消えていくので、より治らない人ばかりが遅れてくることになる。治りが悪いから遅い時期に来るのだ。

以前の突発性難聴の検討では、治るかどうかは受診時期に影響されなかった。難聴が高度な場合には治りが悪い傾向にあった。おそらく治るかどうかは、どの程度の障害を受けたかで決まってしまう。難聴が高度な場合は、より障害が重いので、治りが悪いのは当たり前になるのだ。

たとえば、交通事故の場合、救命率を左右するのは病院までの時間よりも、最初の障害の程度であろう。障害が軽ければ病院までの転送時間が長くても救える。逆に障害が重ければ病院にすぐに運んでも、救命率は悪い。このように考えてもらうといいかもしれない。

 

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