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検査結果と薬処方は一致せず

[2017.12.28]
  • インフル迅速検査陽性=抗インフルエンザ薬処方
  • インフル迅速検査陰性=抗インフルエンザ薬処方しない

このように単純に考えている人ばかりなので、なかなか指導が難しい。自分の言っていることが理解されない。これがとてもジレンマである。

インフル陽性で抗インフルエンザ薬をださないケースはいくらでもあるし、インフル陰性で薬をだす場合もいくらでもある。ケースバイケースで対応すべきだと思うが、上記ルールにこだわっている人が多いので、のちにかなりの苦情がくる。陽性なのに、抗インフルエンザ薬をださないのはおかしい。陰性なのにだすのはおかしいという苦情である。

それらについて改めて説明していく。

迅速検査で陽性であれば、インフルエンザであることは疑いない事実である。陽性であっても、薬(抗インフルエンザ薬のこと)をださない場合は、次のようなときである。

1)症状が軽いとき

 インフルエンザであるのに、ほとんど症状がでない人はいる。熱が37度に達しない人すらいるのだ。症状がひどくなってこないのは、おそらく自分が免疫をもっている場合だと思う。自分の免疫力で、インフルエンザを抑え込んでいるわけだ。このような人たちは、薬を使わなくても自分の免疫力だけでウイルスを抑え込めるので、薬を使う必要はない。もちろん最初はたいしたことなくても、のちに書状がひどくなってくる人もいる。僕自身も何人かそのような患者はみてきた。このため、インフルエンザの薬をほしいかどうかは、必ず確認している。ほしいと言った場合は、処方するようにしている。しかし、いらないというから、処方しなかったケースで「陽性なのに薬をださないのはおかしい」という苦情が何人からきた。「ほしいなら最初からほしいと言えばいいだろう。」と腹がたってくる。

2)発症後48時間を経過しているとき

 抗インフルエンザ薬は、ウイルスを殺す薬ではない。だから、増えてしまったウイルスにはまったく効果がない。この薬はウイルスの増殖を抑える薬なのだ。発症後48時間で、ウイルスの増殖はピークになると言われている。その時間をすぎると、徐々にウイルスは減っていき、症状が楽になってくるのだ。このため、薬の保険適応も、発症後48時間以内とされている。それをすぎてから、薬がほしいと言われても、保険適応そのものがないのである。ウイルス増殖がピークを迎えてしまえば、その後の薬の効果はほとんど期待できない。そのような場合は意味がない。

3)本人が薬を希望しないとき

 インフルエンザというのは、多くは自然になおる。薬など飲まなくても自然に治る病気なのだ。副作用が怖いから、子供に薬を飲ませたくないという親がときおりいる。副作用をそんなに怖がるような薬ではないとは思うが、飲まなくてもインフルエンザは治るので、その希望は尊重して、薬はださない。薬を飲まなくても、翌日熱が下がったというケースもかなりあるのだ。飲むのが不安であれば、飲まないほうがいい。

1)~3)のような場合には、検査で陽性であっても、薬はださない。もちろん、薬をだしてほしいといいう要望があれば、出すようにはしている。

次に陰性なのに薬をだす場合を書いていく。

1)明らかにインフルエンザだという場合、

インフルエンザの検査で陽性にでる確率は、せいぜい7割ぐらいである。インフルエンザであったとしても、3割は陰性にでてしまう。そのような場合は、臨床症状や、インフルエンザ患者との接触歴を参考にして、診断する。絶対にインフルエンザだと思う場合には、薬をだす。もちろん、本人がいらないというのならださないが。

 僕の場合は、受診時にすぐにインフル検査をする。翌日まで待つことはない。一日待つことで、ウイルス量が1億倍(だったかな)に増えるとも言われている。すぐに検査をすると、陽性となる確率はさらに下がる。しかし、薬がウイルスの増殖を抑えるものである以上、時間がたってウイルスが増えて、症状がひどくなってからでは、薬の効きは悪くなってしまう。そうなる前に飲んでしまうのが、なによりも劇的に効果があるのだ。検査にこだわると陰性だから、インフルエンザでない、薬はいらない。そのようなことになる。翌日再診させて改めて再検査をして、陽性になったのを確認してから薬をだすのは、後手になってしまい、症状はおさえにくくなる。まだ、陰性にしからないときに、だしてしまうほうがいいのだ。陰性なのにインフルエンザと診断できるのかと言われれば、多くは判断できる。少なくとも、迅速検査よりは、自分の診断的中率のほうが高いと思っている。この場合に問題なのは、すぐに薬を使ってしまうと、ウソのように症状がよくなってしまうので、インフルエンザだという自分の診断が信じてもらえなくなることだ。「インフルエンザならこんなに早く症状がよくなるはずがない。」と思っている人はかなりいる。早期に(検査が陽性になる前に)薬をだせば劇的によくなるのだが、多くの人はウイルスが増えまくって、症状がとことん悪くなって、検査が陽性にでるようになってからの治療を希望する。早く治せば、診断がおかしいと逆に不信感をいだかれる。検査で陰性でもインフルの診断ができるかどうかは、その医者が経験を十分に積めばできるようになる。見極めのポイントは、臨床症状と流行の状況である。

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