メニュー

急性副鼻腔炎に対しての誤解(1)

[2018.05.09]

昨日、急性副鼻腔炎のガイドラインを見直していた。大人と子供で話が少し違うのだが、今回は大人の急性副鼻腔炎について話をすることにする。

急性副鼻腔炎に関して大きな誤解がある。患者さんにも、医者にもだ。

「急性副鼻腔炎の診断は、副鼻腔レントゲン写真で行う。」×

まず、これが違う。ガイドラインからおおまかに抜粋すると、その診断は問診と、鼻内所見で行う。これが基本である。つまり、レントゲンなどとらなくてもいいということだ。僕は基本副鼻腔のレントゲンはとらない。とるのは、年に2~3人ぐらいかもしれない。ところが、レントゲンをとらないで、副鼻腔炎だというと、患者によっては信じてもらえないこともけっこう多い。レントゲンをとることにより、副鼻腔炎が起こっていることの確認ができることも多い。しかし、とらなくても副鼻腔炎の診断は多くはできてしまう。ではなぜとるのかといえば、患者さんに見せて、悪いことを理解してもらいやすいからだ。ところが問題がある。副鼻腔でも、篩骨洞などの部位は、レントゲンでは確認しづらいのである。つまり、レントゲンで陰影が見られなくても、篩骨洞などの副鼻腔炎は否定できないのだ。レントゲンととって、「レントゲンには異常がないです。でも、副鼻腔炎です。」というような説明が苦しくなる。レントゲンでは見落としがあるし、逆に副鼻腔炎ではないのに、陰影がうつってくることも多い。このため、診断があいまいになってしまう。

開業当初は、当院にはレントゲンがなかった。鼻内所見だけで副鼻腔炎を診断していた。するとある患者がネットに書き込んでいた。「レントゲンもないから、あそこのクリニックはあてにならない。」と書き込まれてしまった。その後院内改装をきっかけに、レントゲンを入れたが、今も副鼻腔のレントゲンはとらない。レントゲンを使うのは、胸部レントゲンのときが圧倒的に多い。これは小児科がはじまったこともあるし、僕自身も大人の胸部レントゲンはとる。これはとらないとわからない病気があるからだ。

副鼻腔炎が本当にあるのかどうかをきっちり確認しようと思えば、副鼻腔CTをとるのがいい。これもガイドラインに書いてある。CTにより、ほぼ確実に副鼻腔炎があるかどうかがわかる。また、その程度もわかるので、軽いものには治療の必要がない。副鼻腔炎のレベルもよくわかる。どうしても必要ならば、CTをとる。

結局、副鼻腔炎の診断に副鼻腔の単純レントゲンはいらない。では、なぜ各クリニックで積極的にとるかといえば、レントゲンをもっているからにほかならない。ところが、レントゲンで治り具合を見ていると、もう一つ問題がある。副鼻腔炎の陰影はなかなかよくならないのだ。このため、治療が長引く。症状がすっかりよくなっても、レントゲンで陰影がよくなっていないと、治療継続の理由にされてしまう。いつまでたっても、治療がおわらなくなる。自分だったら、症状がよくなれば、治療が終わりでいいと考えて通院を終わりにしてしまう。ただし、悪くなったら再度治療をはじめるとは言っておくが。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME