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喘息様気管支炎

小児科領域でよく言われていた病気、喘息様気管支炎という言葉を最近あまり聞かなくなったような気がする。病気がなくなってしまったということではなく、呼び方が変わってしまったものだと思う。

そもそも、喘息様気管支炎とは何かといえば、乳幼児に多いウイルスや細菌感染をきっかけにした気管支炎である。小さな子供は気管支がもともと細く、そこに炎症が起こると空気の通りが悪いために、ヒューヒューした音が聞こえて、あたかも喘息のようである。それが本当の喘息なのか、一時的な気管支炎なのか、その判別が難しいために、喘息様気管支炎というどっちつかずの病名が考えられたのだと思う。区別する必要がないのは、なんとも便利なものである。

風邪の後に、気管支の音がヒューヒュー聞こえるケースは今も多い。小児科医は、喘息っぽいという表現を使い、喘息であることを暗示する。とは言っても、風邪のあとの出現では、喘息っぽいがウイルスなどの気管支炎のほうが考えやすいと思っているのかもしれなし。

RSウイルスというのは聞いたことがあるだろう。 Respiratory syncytial virus(RSV)のことである。鼻かぜウイルスとも言われ、大人などが感染しても鼻水がでる程度の軽い風邪症状で終わってしまいたいしたウイルスではない。ところが2歳未満の乳幼児が感染を起こすと、気管支に炎症を起こしやすい。このため、ヒューヒュー、ゼイゼイを起こしやすいのだ。夏や冬にいくらでも流行するウイルスである。今はこのウイルスの同定検査があり、インフルエンザのように容易に検査で確認できる。おそらく、少し前に喘息様気管支炎と言われていたものの中に、かなりRSウイルスによる気管支炎があったのではないだろうか。喘息様気管支炎と言われていたものが、RSウイルスによる感染が証明され、RSウイルス感染症という分類でくくられることが多くなってきているのであろう。一度RSウイルスに感染すると、しばらくの間はちょっとした風邪のウイルス感染でもゼイゼイと気管支炎症状を起こすようになってしまう。これなども喘息様気管支炎ではなく、RSウイルスの後遺症ととらえられるようになってきたのかもしれない。

呼吸器症状がひどくなって大学病院小児科などにたびたび子供を紹介する。以前は、喘息様気管支炎と言う病名で返ってきたものが、最近はRSウイルス感染症ですと返されるものが多い。喘息様気管支炎という病気がなくなったわけではなく、呼び方の変遷なのであろう。

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